2026/07/16 22:01

普通だった。

サイズは決まった。

ポケットへ収まる感覚も。

手に持った時のバランスも。

自分の中では納得できるトラッカーウォレットになった。

でも、机の上へ置いて眺めると、普通だった。

使いやすい。

それは、この財布に必要なこと。

でも、それだけなら自分が作る理由にはならない。

このトラッカーウォレットには、まだ表情がありませんでした。

最初から決めていたことがあります。

それは、大きく形を変えないこと。

自分が作りたかったのは、コンパクトな財布ではありません。

トラッカーウォレット。

だから、その文脈は残したかった。

昔のトラッカーウォレットを調べる中で、自然と1950年代から60年代頃のデザインへ惹かれていきました。

少し短くなったフラップ。

無骨さの中に、どこかファッションとしての空気も感じる時代。

その雰囲気は、自分が昔から好きだったものと重なっていました。

それでも、まだ普通だった。

そこで、一度手を止める。

「自分は何が得意なんだろう。」

思い返せば、昔から変わっていなかった。

スケートボードも。

革も。

気付けば、いつも組み合わせていた。

だから今回も、新しい何かを生み出そうとは考えませんでした。

色々なスタッズを並べてみる。

組み合わせてみる。

また並べ替える。

少しずつ形は見えてくる。

でも、まだ何か足りない。

もう一癖。

そのことばかり考えていました。

そんな時、ふと思い出した。

ビンテージのスタッズベルト。

バイクのツールバッグ。

長い時間を過ごし、少しだけ頭の潰れたスタッズ。

新品にはない、あの独特な表情。

その空気を、このトラッカーウォレットにも重ねられないだろうか。

完成した試作を、昔からの友人に見てもらう。

返ってきたのは、思っていた通りの反応でした。

「これはやばいね。」

少し眺めたあと、

「なんだこれ。」

「どうなってるの?」

その言葉を聞いた時、ようやく思えた。

これでいい。

その時は、まだ名前なんてありませんでした。

でも、その表情だけは、もう完成していたんです。

*To Be Continued.*